FBAR未提出の言い訳、どう書く?Non-willful記述のポイント

こんにちは。米国公認会計士(CPA)&ファイナンシャルプランナーのトクとく子です。今日は、FBAR未提出者にとっての救済策Streamlined Foreign Offshore Procedureで必要な、非故意Non-willfulの説明文書についてお話しします。
FBAR未提出者のための救済策Streamlined Foreign Offshore Proceduresとは?
米国市民や居住者は、日本にお住まいの方でも米国外に$10,000を超える金融資産を保有している場合、FBAR(外国銀行および金融口座報告書)の提出が義務付けられています。(FBARについては、こちらのコラムをご参照ください。)
しかし、意図せず提出していなかったという方も少なくありません。海外口座を報告していなかった方にとって、FBAR未提出は重大な税務違反とされ、故意の場合には最大で口座残高の50%に相当する罰金が科される可能性があります。非故意の場合でも最大$10,000の罰金が課される可能性があります。そのような方々のために用意されている救済制度が、Streamlined Foreign Offshore Procedures(SFOP)です。
これは、非故意の申告漏れに対して適用されるIRSの救済措置で、提出期限を過ぎた直近3年分の修正申告書と6年分のFBARを提出し、「Non-willful」だった旨を説明することで、重い罰則を免れる制度です。(Streamlined Foreign Offshore Proceduresについてはこちらのコラムをご参照ください。)
注:ここでは米国外居住者向けのSFOPで提出が必要なForm14653についてご説明します。米国内居住の方の場合は、Streamlined Domestic Offshore Proceduresとなり、提出する書類はForm14653ですが、Non-willfulのポイントはForm14653と同様です。
「Non-willful」説明とは
SFOPでは、過去数年分の修正申告およびFBARの提出に加えて、Form 14653(Certification by U.S. Person Residing Outside of the United States for Streamlined Foreign Offshore Procedures)を提出する必要があります。
このフォームの中で特に重要なのが、「Non-willful(非故意)」であった理由の説明です。Form14653には、「なぜFBARの義務を認識せず、結果として未提出となったのか」という説明を自分の言葉で記載します。単に「知らなかった」だけでは不十分で、その認識の欠如に合理的な根拠があるかどうかが問われます。
IRSが求める「Non-willful説明」の中身とは?
IRSのインストラクションによると、以下の要素を含めて説明文を作成する必要があります。
- なぜ以下のことができなかったか、具体的に説明
· 所得のすべてを報告できなかった理由
· 税金を全額納付できなかった理由
· FBARを含む情報提出義務に違反した理由
- 自身の全体像を説明
· 個人の背景(教育歴、移住歴、在外年数など)
· 経済的背景(収入、資産状況)
· 関連するすべての事実(好ましい事実も不利な事実も含める)
- 外国資産の由来と利用状況の説明
· 相続・開設経緯
· その資産との接触(入出金、投資、管理判断など)
- 専門家の関与がある場合
· 氏名、住所、電話番号
· どのような助言を受けたか
実際の「Non-willful Statement」には、必ず「なぜ申告しなかったのか」「口座の背景・運用状況」「誰のアドバイスに従ったか(あれば)」など、個人ごとの具体的な事情を詳述することが求められます。
Non-willfulの説明例
「故意」(Willful)や重過失とは異なり、無知や勘違い、善意の誤認、正当な事情に基づくケースはNon-willfulに該当する可能性があります。以下に、Non-willfulの説明に記載し得る具体例を挙げますが、これらを記載すれば必ずしもIRSに認められ、ペナルティが免除されることを保証するものではありません。個別事情に応じた判断が必要となります。
- 外国口座/資産の存在や報告義務そのものを知らなかった
- 税法や申告義務に対する誤解や善意の勘違いがあった
- 税務や口座の管理について専門家(CPAなど)のアドバイスに依拠しており、そのアドバイスが正しくなかった
- ビジネスや居住国で必要に迫られて口座を開設したが、米国での申告義務の存在を認識していなかった
- 相続や贈与で口座を取得した結果、申告義務が生じたことに気づかなかった
- 口座に関するすべての入出金や運用などを自身で管理していなかったため、申告義務について自身の認識がなかった
- 申告義務が発生する前から海外に長期間居住していたため、米国の税務ルールを十分認識していなかった
- 言語の壁や複雑な税制度への理解不足があった
- 外国金融口座報告及びそれに関する所得以外は毎年期限前に申告及び納税している
- FBARの報告義務を知った後すぐに専門家に相談をして対応している
まとめ
Non-willfulの説明は、単なる言い訳ではなく、あなたの誠実な申告意思と合理的な事情を示す重要な書類です。IRSが意図的な隠蔽ではないと判断すれば、ペナルティが減免される可能性が高まります。
FBARの未報告に気づいたら、速やかに対応することで高額な罰金を避けられる可能性があります。手続きは複雑なため、ご不安な場合は専門家への相談をご検討ください。
弊社では、FBARの未報告の方への救済手続きも対応しております。世界最大手会計事務所での勤務経験を持つ米国公認会計士(USCPA)が直接対応し、複雑な国際税務を専門的かつ丁寧にサポートいたします。少人数チームならではの柔軟性で迅速かつ丁寧にお手伝いします。ご自身の状況にご不安がある場合には、ぜひ一度ご相談ください。