非居住者用米国贈与税申告「Form 709NA」が2024年贈与分から新登場

こんにちは。米国公認会計士(CPA)&ファイナンシャルプランナーのトクとく子です。これまでは、たとえ贈与者が米国の非居住者(nonresident)であっても、贈与税申告には米国居住者と同じForm 709を使用する必要がありました。しかし、2024年分からは非居住者向けの専用様式Form 709NAが導入されました。今日は、アメリカから見た非居住者が贈与をする場合の米国での税務申告についてお話をします。
米国贈与税申告の基礎知識:非居住者が贈与税申告が必要となる場合
米国では、贈与税は贈与を行った人(贈与者)が申告し、納税する仕組みです。日本の、贈与を受けた人が申告・納税仕組みとは正反対です。
非居住者が贈与税の申告(Form709NAの提出)が必要となるのは以下の要件をすべて満たした場合です。
・1年間で年間除外額(2024年時点では年$18,000)を超える贈与をした場合
・米国にある資産(assets situated within the US)を贈与した場合
・上記の資産が有形資産(例:不動産、車、美術品、宝石など)の場合
なお、贈与の受け取り手(受贈者)がアメリカ市民、居住者、または非居住者かどうかは原則関係ありません。
Form 709NAの提出期限と提出方法
提出期限は、贈与を行った年の翌年4月15日です。延長申請により、申告期限は最大6か月(10月15日まで)延長可能ですが、税金の納付期限は延長できず、4月15日が期限です。
なお、これまでは郵送提出のみでしたが、2024年分の申告からは、Form 709およびForm 709NAの電子申告(e-filing)も利用可能になりました。
ただし、非居住者による提出や特定のソフトウェア環境により、引き続き郵送提出が必要なケースもあるります。
Form 709NA導入の背景
これまで非居住者は居住者と同じForm 709で贈与税の申告を行っていましたが、この様式では居住者と非居住者の税制上の違い(例えば、非居住者には米国外資産の贈与に対して贈与税が課されないなど)を十分に反映できず、申告範囲の違いから混乱を招くことがありました。この課題を解消するため、2024年贈与分から新たに「Form 709NA(United States Gift Tax Return for Nonresidents Not Citizens of the United States)」が制定され、より明確な申告が可能となりました。
日本⇔米国間の贈与での申告書の違い
l 日本から米国への贈与:
- 贈与者が日本居住者の場合、日本の贈与税の対象となる可能性があります。
- 米国側では、受贈者が米国居住者などの場合、外国人からの受贈としてForm 3520の提出が必要となる場合があります。Form 3520についてはこちらのコラムを参照ください。
l 米国から日本への贈与:
- 贈与者が米国市民・永住権保持者・米国居住者の場合、全世界の資産が米国贈与税の対象となり、申告基準を満たせばForm 709での申告が必要です。
l 非居住者による米国内資産の贈与:
- これがForm 709NAの主な申告対象です。(例:日本在住者が米国の不動産を子に贈与する場合など)
まとめ
2024年から導入されたForm 709NAにより、非居住者による米国資産の贈与申告がより明確かつ適正に行える体制が整いました。贈与者・受贈者が日米間にまたがる場合は、二重課税や申告漏れを防ぐため両国の税制度を的確に把握することが重要です。贈与の計画がある方は、早めに専門家に相談し、正しい手続を行うこと、税務上のリスクを最小限に抑えることが可能です。
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