米国税法上のLong-term Residentとは?永住権保持者が知っておくべき定義と例外
こんにちは。米国公認会計士(CPA)&ファイナンシャルプランナーのトクとく子です。米国税務において、「Long-term Resident(長期永住者)」に該当するかどうかは、海外在住のLawful Permanent Resident(永住権・グリーンカード)保持者にとって非常に重要です。これは、永住権放棄をする際に「Exit Tax(出国税)」の対象となるかどうかに関係するためです。
今日は、米国永住権保持者がLong-term Residentに該当する条件と、その例外について詳しく解説します。
Long-term Resident(長期永住者)とは?IRSが定める基準
Internal Revenue Code(IRC)第877(e)(2)項では、Long-term Residentを、「過去15年間のうち、少なくとも8年間にわたり米国の永住権(グリーンカード)を保持していた個人」と定義しています。ここでの「1年」とは、暦年(Calender year)単位でカウントされ、永住権を1年の一部でも保有していれば、その年は1年と数えられます。
Long-term Residentに該当する場合は、永住権放棄時にForm 8854の提出が必要となり、さらに要件を満たす場合、いわゆるExit Tax(出国税)の課税対象となります。
(Form 8854についてはこちらのコラムを参照ください。)
永住権保持者がLong-term Residentに該当する条件
米国税務上のLong-term Residentに該当するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
1.米国の永住権を保持している(もしくはしていた)こと
2.過去15年間のうち8年以上にわたって米国税務上の居住者(Resident alien)として課税されていたこと
ここで重要なのは「米国税務上の居住者」とされていたかどうかです。永住権を持っていても、一定の条件を満たせば、その年を「非居住者」として扱うことが可能です。
米国税務上の居住者として含めなくてよい要件
以下の3つの要件をすべて満たす場合は、Long-term Residentとしての8年間に含めないことが可能です。
1.租税条約に基づき他の国(例:日本)の居住者として扱われていたこと
2.その租税条約の利益を放棄していなかったこと
3.Form 8833 を提出することにより、IRS にその旨を通知していたこと(※)
※ Form 8833 Treaty-Based Return Position Disclosure Under Section 6114 or 7701(b)を提出し、「日米租税条約第4条(居住者の定義)」を根拠に、自らを日本の税務居住者と主張します。このフォームを提出することで、その暦年は「米国の税務上の居住者」とみなされないため、Long-term Resident判定における居住年から除外されます。
実務上の落とし穴:
毎年米国に税務申告をしていたとしても、その税務申告時にForm 8833を提出していない場合は、たとえアメリカと租税条約のある日本に住んでいる、というだけでは、Long-term Residentとしての期間対象外とすることはできません。
まとめ
Long-term Residentに該当するかどうかは、「形式的な永住権の保持」や「米国内に居住していた期間」ではなく、「税務上の居住者として何年間カウントされたか」が判断基準となります。
もし、Form 8833を提出しなければ、その年を非居住年と主張することは原則できません。Form 8833の提出により、非居住者年とできる場合、Form 8854の提出及びExit Tax対象から除外される可能性があります。
米国永住権を保持しつつ日本に居住する方、あるいは永住権の放棄を検討している方は、今一度ご自身の状況を確認し、ご自分が対象となるかどうか、ご不安な場合は専門家への相談をご検討ください。
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