日本とアメリカ間の国際相続に関する税金のよくある質問Q&A

こんにちは。「米ドル資産運用のコンシェルジュ」米国公認会計士(CPA)&ファイナンシャルプランナーのトクとく子です。今回は「日本とアメリカにまたがる相続」に関して、よくいただくご質問にお答えする形式で解説します。親が日本にいて、子どもがアメリカに住んでいる。またはその逆などのケースが該当します。
前提:アメリカ側はここでは日本の国税に該当する、連邦の税務についてお話しします。州によって扱いは異なりますので、各州の税務は個別に調べる必要があります。
Q1:日本にいる親から、アメリカに住む子どもが遺産を相続した場合、税金はどこに払う?
とく子回答:日本では「被相続人が日本に住んでいる」場合、原則として全世界の財産が日本の相続税の対象になります。つまり、相続人である子どもがアメリカに住んでいても、日本で相続税の申告・納税が必要になります。一方で、アメリカは、相続人には課税されません。
Q2:アメリカに住むアメリカ国籍の兄弟から遺産を受け取った日本在住の相続人の場合の相続税は?
とく子回答:アメリカの遺産税(Estate Tax)は「被相続人の財産」に課税される制度です。アメリカ国籍の方の場合、遺産が一定額(2025年時点では約1,300万ドル(※))を超えない場合、アメリカ側では課税されません。しかし、日本側では「相続人が日本に居住していれば」、たとえアメリカの遺産であっても相続税の課税対象となります。
※:生前贈与の額も含めたLife Time Exclusion(人生累計控除額)の金額
Q3:日本にいる親から、アメリカに住む子どもが遺産を相続した場合、または、生前贈与された場合、アメリカ側で必要となる手続きは?
とく子回答:アメリカに住む子どもが日本に住む親から相続や贈与を受けた場合、1年間受取資産の合計が100,000ドルを超える場合は、IRS(日本の国税庁に相当)への報告義務(Form 3520の提出)があります。(Form3520について、詳しくはこちらのコラムをご参照ください。)また、海外の金融口座残高が10,000ドルを超える場合には、FBARの提出も求められます。(FBARについて、詳しくはこちらのコラムをご参照ください。)提出を怠ると、多額のペナルティが課される場合がありますので、注意が必要です。
Q4:日本とアメリカ、両方で課税されたらどうなる?
とく子回答:「日米相続税条約」により、両国がそれぞれ相続税を課すような状況では、どちらか一方の課税が軽減または除外されることがあります。
Q5:日本に住む日本人がアメリカに不動産を所有したまま亡くなった場合のアメリカの手続きは?
とく子回答:日本人(アメリカから見た非居住者)がアメリカに不動産を残して亡くなった場合、その不動産の評価額が60,000ドルを超える場合はアメリカの遺産税(Estate Tax)の申告が必要になります。通常、非居住者には$60,000の基礎控除しか認められませんが、日米租税条約を適用することで、アメリカ市民と同様のLifetime Exclusion(約1,300万ドル、2025年基準)、全世界資産に対するアメリカ資産割合で案分した金額の控除が可能になります。
まとめ
国をまたぐ相続には、税金・手続き・法律の違いが大きく関係してきます。今回ご紹介したFAQはあくまで基本的なポイントです。実際のケースでは状況に応じた対応が必要になるため、不明点はぜひ専門家にご相談ください。
弊社では、日本とアメリカの両国にまたがる相続に関するご相談に対応しています。世界最大手会計事務所での勤務経験を持つ米国公認会計士(USCPA)が直接対応し、複雑な国際相続に関する税務を専門的かつ丁寧にサポートいたします。少人数チームならではの柔軟性で迅速かつ丁寧にお手伝いします。ご不安がある方は、ぜひご相談ください。