米国籍離脱・永住権放棄のベストなタイミングとは?
こんにちは。米国公認会計士(CPA)&ファイナンシャルプランナーのトクとく子です。今日は、米国籍離脱や永住権放棄を検討している方に向けて、「離脱・放棄を決断するきっかけとなる状況」と「1年の中で最も適した離脱タイミング」について、米国税務の一般的な観点からお話しします。
米国籍の離脱や米国永住権(グリーンカード)の放棄は、単なる行政上の手続きだけではなく、税務面で重大な影響を持つ決断です。特に、Expatriation Tax(いわゆるExit Tax)の判定は、離脱する日付やその年の所得・資産状況に大きく左右されます。
(米国籍離脱時の未申告者向け救済策に関しては、こちらのコラムをご参照ください。)
米国籍離脱・放棄を検討するきっかけ
まず、離脱や放棄を具体的に検討すべき典型的なケースをいくつかご紹介します。
1. 米国への申告・報告義務が負担になったとき
日本に居住していても、米国市民・永住者である限り、IRS(米国内国歳入庁、米国の国税庁に相当)への確定申告義務は続きます。FBAR(外国金融口座報告)などの報告義務に加え、日本国内の金融機関での口座開設が制限されるなど、日常生活への支障も大きなきっかけとなります。
2. 資産増加により「出国税」の対象になりそうなとき
出国税は、①純資産が200万ドル以上、②過去5年の平均所得税額が一定額を超える、③過去5年分の申告・納税状況をForm 8854で証明できない、のいずれかに該当する場合に「対象出国者(Covered Expatriate)」となり、課税される可能性があります。将来的に資産(不動産や株式の含み益など)が急増すると予測される場合、その前に離脱・放棄することで、出国税の対象となるリスクを抑えられる可能性があります。(出国税に関しては、こちらのコラムをご参照ください。)
3. 日本などで事業を開始(法人設立)するとき
外国法人のオーナーとなる場合、米国の税務申告は「Form 5471」の提出など、非常に複雑になります。法人設立前に離脱しておくことで、これら煩雑な義務から解放され、事業に集中できる環境が整います。
年間で最も有利となる離脱タイミング
税務の観点からは、一般的に離脱・放棄の「1年の中で最も有利な時期」は、年初から早い時期が有利とされます。その主な理由は以下の通りです。
1. 二重身分申告(Dual-Status)の負担軽減
離脱した年は、離脱日までが「全世界所得」、離脱日以降は「米国源泉所得のみ」の申告対象となる「Dual-Status Year」となります。年初に離脱することで、米国申告の対象となる全世界所得の期間を短くでき、離脱年自体の申告対象となる所得を低く抑えることが可能になります。
2. 余裕を持った手続きの準備期間の確保
領事館予約、必要書類準備、Form 8854(Form 8854については、こちらのコラムをご参照ください。)の要件確認、過去5年間の税務申告書やFBAR報告の準備など、離脱手続きは多方面にわたり準備が必要です。1年の初めのころから準備することで余裕をもって手続きを進められます。
離脱年(Dual-Status Tax Return)の留意事項
上記のように、年初に離脱する方が、全世界所得を含める期間が短くできるため、年間の総申告額は低くなりますが、一方で、離脱年は米国籍・永住権保持者が取れる標準控除(2025年の独身・夫婦別の場合は$15,750)や外国役務控除Foreign Earned Income Exclusion(2025年は$130,000まで)が取れません。しかし、外国税額控除Foreign Tax Creditは引き続き適用可能です。
まとめ
米国籍離脱・永住権放棄に最適なタイミングは、
① Exit Tax リスクが高まる前の時期(年単位)
② 過去5年間の申告が完全に整ったタイミング
③ 離脱・放棄の年の所得が少ない年初から早い時期(月単位)
です。
離脱・放棄は人生の重要な転機であり、税務上の影響も大きいため、慎重かつ計画的に進める必要があります。また、離脱・放棄に関する税務は複雑なため、ご不安のある方は専門家への相談をお勧めいたします。
弊社では、米国籍離脱・永住権放棄に関する税務申告に対応しています。世界最大手会計事務所での勤務経験を持つ米国公認会計士(USCPA)が、少人数チームならではの柔軟性で複雑な国際税務を迅速かつ丁寧にサポートします。ご自身の状況に合わせた最適なご提案をいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。


